民法改正講義案10(債権者代位1)

1 債権者代位の転用事例に条文ができた

 【第423条の7】
登記又は登録をしなければ権利の得喪及び変更を第三者に対抗することができない財産を
譲り受けた者は、その譲渡人が第三者に対して有する登記手続又は登録手続をすべきことを
請求する権利を行使しないときは、その権利を行使することができる。
この場合においては、前三条の規定を準用する。

(1)そもそも、債権者代位権とは

AさんがBさんにお金を貸しました。Bさんが、Cさんにお金を貸しました。

その後、Bさんは、「どうせAさんに右から左でに取られるから」と、Cに対し何の請求もしませんでした。そういう場合、Aさんは、BさんのCさんに対する請求権を行使できます。
これを債権者代位権といいます。AさんはBさんの債権者なので、「債権者」代位権と呼ばれます。

(2)転用事例とは

(1)のとおり、「債権者代位権」は、本来、財産権を確保するためにあります。
では、こういう場合はどうでしょうか。
CさんはBさんに、甲不動産を譲渡しました。さらに、BさんはAさんに不動産を譲渡しました。
しかし、所有権登記は、まだCさんのままであるとしましょう。

このとき、Aさんは、Bさんに対しては、「登記を移転せよ」といえる立場にあります。AB間には契約関係があるからです。しかし、Bの手元に登記がない以上、たとえAさんがBさんを訴えても、勝訴できません。

しかも、Aさんは、Cさんに対しては、原則として請求できません。AC間に契約関係はないからです。ちなみに、中間省略登記もずいぶん前に禁止されましたた。

そうなると、Aさんは、誰にも登記請求できないということになってしまいます。
そこで、このような場合、旧法でも、債権者代位権を転用して、AさんはCさんに対し、「Bに登記を移せ」と請求できると解釈されていました。
この解釈を、新法では条文化したのです。