法改正で発信者情報開示請求しやすくなった!?弁護士が解説します。

Q 法改正で、「発信者情報開示命令」という制度ができ、発信者情報開示請求しやすくなったと聞きました。本当ですか。

A 確かに、開示請求しやすくなった場合もあります。しかし、全てにおいて開示請求しやすくなったとはいえません。

【解説】

法改正により、「発信者情報開示請求命令」という制度が新設されました。
しかも、発信者情報開示命令の新設と同時に、提供命令の制度もできました。

これにより、発信者情報開示がしやすくなることが期待されたのです。

ここで、発信者情報開示の制度を大雑把に申し上げます(爆サイ掲示板に誹謗中傷を投稿された場合を想定します。)。

①爆サイ掲示板管理者に対し、発信者(投稿者)のIPアドレス等の開示を求めます。
②開示されたIPアドレスからプロバイダを割り出し、プロバイダに対し、発信者の個人情報の開示を求めます。

法改正前は、①と②で、2回裁判手続きを踏まなければなりませんでした。
しかも、プロバイダがログを基に個人情報の開示ができるのは、最短で投稿から3か月です。
つまり、投稿から3か月以内に①を終わらせ、②の申し立てをしなければなりません。

これは、なかなか大変でした。

しかし、発信者情報開示命令と同時に、提供命令を申し立てると、①と②を一括で処理できるようになるのです。

これにより、投稿から3か月以内に、①さえ申し立てれば、理論上、少なくともログの消去は回避できることになりました。

すなわち、上記の例でいうと、爆サイ掲示板管理者を相手方として、発信者情報開示命令および提供命令の申し立てをします。
裁判官は、速やかに書類を精査し、妥当だと判断してくれれば、爆サイ掲示板管理者に対し、提供命令を下してくれます(大体1~2週間で下してくれます)。)。
提供命令とは、大雑把にいうと「発信者(投稿者)のIPアドレスからプロバイダを割り出して、プロバイダの名前を申立人に提供せよ」という命令のことです。プロバイダの名前を提供された申立人は、プロバイダに対して、発信者情報開示命令の申し立てをします。

つまり、①が約1~2週間で終わり、②に移行できるのです。

申立書は2回出すものの、実質的には1つの手続きで処理されます。

これにより、発信者情報開示が楽になる……はずでした。

しかし、既にいくつか問題点が指摘されています。

(1)まず、提供命令自体に、強制力がないことです。つまり、提供命令が下っても、無視される場合があるということが報告されています。

(2)また、提供命令についても、不服申し立てができることになっています。したがって、提供命令が下っても、不服申立されてしまうと、かなり時間がかかってしまいます。これでは、速やかに②に行けないので、無意味です。

そのため、提供命令に対し、無視をすることが予想される掲示板管理者や、不服申し立てをすることが予想される掲示板管理者については、これまでどおり、2段階の手続きをしなければなりません。

ということで、法改正があっても、必ずしも発信者情報開示しやすくなったわけではないというお話でした。