民法改正講義案1(時効4)-時効の「中断」「停止」はどうなった?-

時効期間が数えなおしになることを、旧法では「中断」といいます。しかし、「中断」というと、「途中でちょっと止まる」という印象をお持ちの方もいらっしゃるかも知れません。たとえば、「作業を中断」というと、作業を途中を止めることをいいます。作業をやり直すという意味で使う方は少ないでしょう。そのためか、新法では、より分かりやすい表現に変わります。

4 時効の中断・停止は、「更新」「完成猶予」に

【第150条】
1 催告があったときは、その時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
2 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。
【第152条】
1 時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始める。
2 前項の承認をするには、相手方の権利についての処分につき行為能力の制限を受けていないこと又は権限があることを要しない。
(1)ひとこと解説

結論自体には、大きな変化はありません。表記が変わっただけです。

(2)詳細解説

「裁判所を使って請求をしたり、債務者が承認をしたりすれば、時効は数えなおしになる。」
「裁判所を使わずに、支払を求めたしただけでは、6か月間に限り時効は止まる。」という大きな構造に、大きな変化はありません。
しかし、「中断」「停止」というと、いったいどっちがどっちなのか分かりづらいので、「更新」(時効期間の数えなおし)・「完成猶予」(時効完成がその期間だけ止まる)という2種の表現に変えられました。

(3)例

ア 更新

時効の起算点(たとえば、借金の返済期日)から何年かして、「更新」があった場合、「更新」の時から、原則としてさらに5年しないと時効は完成しません。
2031年1月31日に借金の返済期日が来るも、債権者が放置したとします。
2034年1月31日に債権者が「更新」の手続をとったとしましょう。
すると、2039年1月31日までは時効が完成しないことになります。

イ 完成猶予

時効の起算点(たとえば、借金の返済期日)から何年かして、「完成猶予」があった場合、「完成猶予」の期間だけ、時効は完成しません。
2031年1月31日に借金の返済期日が来るも、債権者が放置したとします。
2036年1月15日に、債権者の行為により、6か月間の「完成猶予」が認められました。
すると、2036年7月15日までは、時効が完成しないことになります。

(4)補足

旧法と同じように、承認は「更新」となります。普通の借金において、お金を借りた人が「承認」をしてしまうと、「承認」から5年しないと時効は完成しません。

旧法と同じように、「催告」は、6か月間の完成猶予となりますが、再度の催告が意味を持ちません。上記の「イ」で、2036年7月14日に再度「催告」をしても、やはり、2036年7月15日を過ぎると時効は完成します。