民法改正講義案9(詐害行為取消4)

4 全員悪意でなければ、詐害行為取消できない

【第424条の5】
債権者は、受益者に対して詐害行為取消請求をすることができる場合において、
受益者に移転した財産を転得した者があるときは、次の各号に掲げる区分に応じ、
それぞれ当該各号に定める場合に限り、その転得者に対しても、
詐害行為取消請求をすることができる。
一 その転得者が受益者から転得した者である場合その転得者が、転得の当時、
債務者がした行為が債権者を害することを知っていたとき。
二 その転得者が他の転得者から転得した者である場合その転得者及び
その前に転得した全ての転得者が、それぞれの転得の当時、債務者がした行為が
債権者を害することを知っていたとき。

(1)ひとこと解説

転得者に対して詐害行為取消をするには、転得者のみならず、受益者も悪意であることが必要です。

受益者というのは、債務者から直接財産を受け取った人を言います。転得者とは、受益者からさらに財産を受け取った人をいいます。

(2)例

やはり、例を示します。AさんがBさんにお金を貸しました。Bさんが無資力になったので、Bさんは、自分の唯一の財産である甲不動産をCさんに渡しました。CさんはさらにDさんに甲不動産を譲渡しました。

この場合、甲不動産はDさんが持っているので、Aさんとしては、Dさんに詐害行為取消訴訟を提起したいところです。
しかし、CさんもDさんも、Bさんの無資力を知っていた場合でない限り、Aさんは勝訴できません。
旧法では、DさんさえBさんの無資力を知っていれば、Aさんは勝訴できることになっていました。

詐害行為取消請求訴訟の効果が全ての債権者に及ぶことになったからだと思われます。