民法改正講義案5(保証6)ー債権者にも聞ける!……が-

前回は、債務者(お金を借りる人)から、情報提供を求めることができるという条文でした。今回は、債権者(お金を貸す人)からも情報提供を求めることができるという条文です。

6 保証人は債権者に情報提供を求めることができる

【第458条の2】
保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、保証人の請求があったときは、債権者は、保証人に対し、遅滞なく、主たる債務の元本及び主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのものについての不履行の有無並びにこれらの残額及びそのうち弁済期が到来しているものの額に関する情報を提供しなければならない。
(1)ひとこと解説

保証人は、債権者に対し、主債務(借金の内容)に関する情報提供を求めることができます。

(2)詳細解説

保証人は、債権者に対し、主債務に関する情報提供を求めることができます。しかも、条文上、事業資金という限定がないので、事業資金に限らず、全ての保証契約に適用されます。ただ、前回とは、求めることのできる情報は異なります。前回は、債務者の収支の状況等でしたが、今回は、あくまで借金の内容に限られます。仮に、債権者が、債務者の収支の状況を知っていたとしても、債権者から、債務者の収支の状況を聞けるわけではありません。

もともと、債権者としても、保証人が聞きたいのであれば、借金の内容くらい教えても良いし、そんな手間ではないと考える人が多かったようです。

しかし、保証契約と、お金を借りる契約は、あくまで別個の契約です。したがって、債務者の同意なく、保証人に借金の内容を教えることは個人情報保護法違反ではないかという疑問が指摘されていました。今回、新法で、債権者は、保証人に対し、借金の内容を教えても良いという条文ができたので、個人情報保護法違反になることはなくなりました。

つまり、前回とよく似ているようですが、できた過程や内容が全く異なります。

(3)補足

情報提供されなかった場合の効果については規定がありません。保証契約を取り消せるわけではないといっていいでしょう。

なお、なぜ保証人が債務の内容を知らないことがあるかというと、契約書を紛失したり、そもそも、契約書をもらっていない例が意外と多かったからだと思われます(私の経験則です。)。