民法改正講義案2(約款2)-約款の内容が不合理だったら?-

中身を見ていなくても、約款の内容が契約内容となることがあります。そうなると、こっそり不合理な条項を紛れ込ませる悪徳業者が現れるかも知れません。
そこで、不合理な内容の約款は、その不合理な部分に限り合意なしとみなすのです。

2 不合理な条項については、合意なしとなる

【第548条の2】
2 前項の規定にかかわらず、同項の条項のうち、相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する条項であって、その定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして第一条第二項に規定する基本原則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものについては、合意をしなかったものとみなす。

(1)ひとこと解説

約款取引において、不合理な条項については、合意がなかったものとみなされます。無効ですらありません。

(2)詳細解説

548条の2第2項がないと、不合理な条項に対しては、民法90条(公序良俗違反無効)などでしか対応できないことになります。規定ぶりからして、公序良俗違反ではないとしても、信義則違反で一方的な権利侵害といえるものについては、合意なしとできることになるでしょう。なお、消費者契約法があるではないかとお考えの方もいらっしゃるかも知れません。確かに、548条の2第2項は、消費者契約法10条とよく似ています。

消費者契約法第10条 消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。

しかし、消費者契約法は、文字どおり、消費者にしか使えません。個人事業主には使えないのです。したがって、フランチャイズ契約など、個人事業主となる契約に、消費者契約法は適用されません。これに対し、民法548条の2第2項は、あらゆる定型約款契約に適用されます。消費者契約法があっても、民法548条の2第2項は必要なのです。もし、フランチャイズ契約が定型約款にあたれば、消費者契約法は適用されなくても、民法548条の2第2項が適用される可能性がでてきます。

なお、不当な内容のみならず、不意打ち的な内容も合意なしとされるそうです(立法者)。

たとえば、コピー機を買う際に、定型約款の中に、「このコピー機を買った人は、コピー用紙を弊社から買わなければならない」という条項が入っていたとします。コピー用紙の価格が暴利な場合には、不当な内容なので、合意なしとなります。しかし、コピー用紙の価格が妥当であっても買い手によっては(たとえば、買い手が製紙会社や文具店である場合など)、不意打ち的な内容として合意なしになる可能性があるのです。

 

(3)補足

旧法下で締結された定型約款契約は、新法下でも有効です(附則33条)。有効である以上、民法548条の2第2項は、旧法下における定型約款といえども、不合理な条項は、合意なしとされます。つまり、消費者契約法の適用がなく、旧法下では、公序良俗に反していないので有効とされた定型約款が、新法では不合理な条項として合意なしとされる可能性は十分にあります。

したがって、定型約款にあたりそうな契約をしている方は、念のため、内容を確認した方が無難です。