民法改正講義案1(時効7)-完全に新しい制度!-

今回は、完全に新しい制度です。ぜひ、抑えておいてください。

7 書面による協議の合意があれば1年間完成猶予

【第百五十一条】
1 権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは、次に掲げる時のいずれか早い時までの間は、時効は、完成しない。
一 その合意があった時から一年を経過した時
二 その合意において当事者が協議を行う期間(一年に満たないものに限る。)を定めたときは、その期間を経過した時
三 当事者の一方から相手方に対して協議の続行を拒絶する旨の通知が書面でされたときは、その通知の時から六箇月を経過した時
2 前項の規定により時効の完成が猶予されている間にされた再度の同項の合意は、同項の規定による時効の完成猶予の効力を有する。ただし、その効力は、時効の完成が猶予されなかったとすれば時効が完成すべき時から通じて五年を超えることができない。
3 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた第一項の合意は、同項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。同項の規定により時効の完成が猶予されている間にされた催告についても、同様とする。
(1)ひとこと解説

書面による協議開始の合意から1年間(合意によって短くすることは可能)、時効の完成が猶予されます。
しかも、催告と異なり、再度合意を行うことによって、最大5年間完成猶予できます。

(2)詳細な解説

書面による協議開始の合意から1年、合意による協議期間(1年未満に限る)、協議続行拒絶通知から6か月のうち、もっとも短い期間について、時効は完成しません。
協議の内容は、債権の範囲や、時効の有無について協議をすることが考えられます。もっとも、権利があることを認めていれば、「承認」であり、「更新」になってしまうので、合意の方法については注意が必要です。

(3)例

ア 書面による協議の例

Aさんは、Bさんにお金を貸したものの、返済期限直後にBさんが行方不明になった。返済期限から4年半後、Bさんが見つかったので、Aさんは返済を求めた。すると、Bさんは、「借りた記憶はないが、あなたがそこまでいうなら、とりあえず話し合いには応じる」といって、書面で協議の合意をした。
→この場合、1年間完成猶予となります。「催告」をしているのではないかとお考えの方もいらっしゃるでしょう。しかし、催告では、半年しか完成猶予の効果がないので、書面による協議に意味があります。

イ 承認になってしまう例

Aさんは、Bさんにお金を貸したものの、返済期限直後にBさんが行方不明になった。返済期限から4年半後、Bさんが見つかったので、Aさんは返済を求めた。すると、Bさんは、「確かに借りたが、今は支払えない。支払方法について話し合いたい」といって、書面で協議の合意をした。
→この場合、Bさんの行為は「承認」なので、「更新」となってしまいます。

(4)補足

ア 合意による協議期間が1年未満なのには意味がある(私見)

協議期間が1年未満でしか定められないのは、不当に長い期間を協議期間として、時効の完成を不当に免れるのを防止する意味でああると思います。
例えば、契約書に「本契約に関する協議期間は100年とする」とされると、事実上、時効が完成しなくなります。

イ 時効完成後に協議の合意をした場合の効果は不明(私見)

たとえば、金融業者が、既に時効が完成していることを知りながら、債務者のもとにいき、「今は、払わなくてもいいし、承認してほしいとも言いません。でも、せめて協議の合意だけはしてほしい」などといって、サインをさせたらどうなるでしょうか。

私が調べた限り、この場合、どうなるのか書いてある文献は見つかりませんでした。

ただ、催告後に協議の合意をしても、完成猶予は認められないという条文があることから考えれば、時効完成後に協議の合意をしても無効と考えるのが自然だと思われます。

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